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エプソンの勝てる知財戦略@嶋口・内田研究会(後編:中国知財事情)

2011年03月28日19:39

震災等もあり、前編のエプソンの勝てる知財戦略「勝てる知財戦略」から大分時間が空いてしまい申し訳ございません。
本日は後編として、「中国知財事情」の部分について書かせて頂きます。

弊方がメーカーの知財部在籍時代の約10年前の事ですが、その頃の中国は法的には整備が進みつつある時代でありましたが、中国の模倣品対策で同僚の商標の担当者が北京の執行官を連れて地方の製造工場で出向いて行ったことを覚えております。その後の10年で中国の知財事情は大きく変わっていることを教えて頂きました。

まず、研究開発費への投入増加や税・融資関連優措置など、中国政府が定めた各種革新奨励策とも密接に関係して、中国の特許出願件数は急上昇しており、国内・海外出願共にトップの地位が目に見えてきていることは、ニュース等から皆様もご存じでしょう。
加えて、その追い風は知財訴訟件数にも及んでおり、2001年の5千件台から2005年には1万件台、2009年には3万件台と急増しています。模倣品等の海外企業からの商標に関する事件が多いのかと思うとそうでもなく、著作権:約1.5万件、商標:約7千件、特許:約4千件と多岐にわたり、さらに原告は国内の企業や個人の方が多いとのこと。一方、知財訴訟の件数を国別で比較すると、米国でも1万件には及んでおらず、日本は数百件レベルですので大きく引き離されており、知財分野でのNo.1の訴訟国家への道も歩んでいると言えそうです。
よって、多くの出願・権利化を目指した先にある、自国の権利を保護し活用するための訴訟基盤の整備も進んでいると考えられ、現状では経済活動に遅れを取っている知財活動も、2008年6月に「中国国家知識産戦略大綱」として発せられた後に、知財ナショナリズムの高まりも急ピッチで醸成されていると思います。

また、エプソンの上柳本部長からは、「逆に言えば、知財で牛耳れる可能性もあり、日本企業にもチャンス有り」と力強いお言葉を頂いておりますが、エプソンのような知財のハイレベルな企業は確かにチャンスだと思いますが、従来のままの日本の知財戦略レベルの企業では質・量共に勝てずに、中国市場では知財で歯が立たない可能性もあると危惧しております。そのことは、一番の市場や生産地において、日本発の知財が機能しないことを意味しており、差別化の為の障壁形成が出来なくなるだけではなく、逆に中国企業に万里の長城のような障壁形成を許してしまうしまうことに他なりません。

さらに、エプソンでは「知財係争は、業界で一番厳しい対応をすることがポイント」とのポリシーをお持ちのようで、これも重要なご指摘だと感じました。そうでなければ、ターゲットとしてまず初期に集中的に訴訟の生贄に祭り上げられ、多くの訴訟で対応が十分取れないために受け身に回ってしまい、形勢不利のまま和解するしかないという負のスパイラルに陥ると思います。

弊方にも多くのご相談がありますが、グローバル化を進める企業様のご支援として、 「攻守の知財グローバルポリシー」 を初期段階で構築されることをお勧めしています。
貴社には「攻守の知財グローバル・ポリシー」がお有りですか?

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エプソンの勝てる知財戦略@嶋口・内田研究会(前編)

2011年02月19日18:30

先日の2/15の嶋口・内田研究会は、セイコーエプソン株式会社 業務執行役員常務 知的財産本部長 弁理士 上柳 雅誉 様から「知的財産戦略の最前線」 ~勝てる知的財産と中国知財事情~についてのお話をお伺いしました。
本日はその前編として、「勝てる知財戦略」の部分について書かせて頂きます。
当研究会はマーケティングに興味がある参加者が多いので、知財とは馴染みのない人にも分かり易く、制度の趣旨の概要、最近の問題点に照らしてご説明して頂きました。
知財コンサルの私にも大いに参考になることがありましたので、備忘録として書かせて頂きます。どれも重みのあるお言葉ばかりです。

・活用出来る特許と出来ない特許がある。
・知財は社長を助けるのが役目 =既存事業の永続的発展、新規事業の促進、最後に知財収入
・知財は、一旦始めた開発でもダメならば引導を渡す ⇒弊方の言う、筋悪R&Dには知財が警鐘をならすと同意(1/19記事)。
・権利行使には、必ずリアクション(カウンター訴訟、無効化、非侵害主張、営業への圧力、業界ぐるみの反発)があるので、圧倒的は強さが必要 ⇒弊方の言う、完璧な知財戦略でなければ活用ができない(6/27記事)オセロを全部ひっくり返すための完璧な知財戦略(5/28記事)。
・よって、ライセンスは、敵を作り、市場を小さくする可能性があり、短期的には良さそうだが、長期的な効力は?
・ライセンス(クロスライセンス含む)時はどこまで出して、どこまで守るのかのポリシーが重要 ⇒弊方の言う、戦場のフェアゾーン決めが重要(5/27記事)
・野球と同じでチーム全員=ポートフォリオ全体の質を上げる、そしてシステムで担保
・目指す姿:事業化するときは知財で既にNo.1

日本でも有数の知財活動と言われているエプソンの知財活動の源泉は、ドルフィン活動等のR&D密着活動とも言われておりますが、クォーツ腕時計→事務用プリンター→個人向けPC用インクジェット・プリンターの分野で知財の貢献もあっての事業の次々の成功体験までの活動が今日も企業風土として生きて続けているからだと思いました。
そんな貢献を知財から支えた上柳さんは「まだまだ知的資産経営とは言えない」と、もっともっと上を目指しておられます。直接お話しをお聞きして、やはりトップ企業の中でも一歩先を行っているなと感じました。

さて、エプソンのビジネスユニットとしては、プリンターやプロジェクター等の花形の情報機器部門が売上の約69%、一部をソニーに譲渡してしまいましたがディスプレイや半導体等の電子デバイス部門が約24%、そしてウォッチや光学・FA機器等の精密機器部門の約6%の3つがあり、垂直統合的なビジネスユニットの構成となっております。上記のように、現在までは情報機器を中心とした単一ビジネスユニットでの成功体験でしたが、今後は3つのビジネスユニット間の垂直統合のシナジーを、知財権やブラックボックス化をツールとして、ダイナミックにどのように競合との障壁を形成するのか、エプソンの知財戦略にも注目してみたいと思っています。

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特許庁、平成23年度から知財プロデューサー派遣による特許高度活用事業を展開

2011年01月19日17:30

昨日の日経BP知財Awarenessに首件の記事が掲載されております。過去特許庁主管の元で「イノベーションと知財政策に関する研究会ワーキンググループ」等の委員の方々で議論された結果を踏まえ、知財プロデューサー派遣による事業展開になったのだと理解しています。

しかし、個人的には下記2点で少し違和感を覚えました。
まず、ネーミングがイノベーション・プロデューサーではなくて、知財プロデューサーなのか、知財の位置づけが不明確なような気がしています。
また、「プロジェクトの研究開発テーマ群に将来必要となる可能性の高い“穴”が無いかを検討し、必要ならば研究開発テーマを再考するなどの研究開発戦略の修正する」、となっておりますが、そもそも勝てそうにない筋悪な開発テーマや開発プロセスについては、初期段階で事業・技術や知財情報分析からきちんとダメ出しをして、勝てるような筋の良い研究開発戦略やイノベーションシステムやビジネスシステムの示唆出しをすることが大前提だと思います。「木を見て、森を見ず」では、プロデューサーとしては失格でしょう。

知財は所詮ビジネス上の一つのツールに過ぎません。知財情報をどのように活用するのか、そして知財権の障壁形成がどのように事業に有利なインパクトを付与するのかというシミュレーションがないまま、取り敢えず出願戦略をすることでは大きなゲインは望めず、従前の知財戦略と大差がないと思います。
また、知財権以外でもブラックボックス化や顧客との絆の形成、ビジネスシステム(ビジネスモデル)での優位性、イノベーションのエコシステムの継続可能性等の障壁形成手段を複数考えてから、知財面でのシナリオを選択すべきです。

我が国の知財創造サイクルは依然として廻らないまま10年を迎えようとしており、 『知財があれば何とかなる』、といった幻想はそろそろ払拭する時期ではないかと思います。知財活用の本質は、イノベーションやビジネスシステム上の障壁形成をサポートすること(主ではなく従、そして、あくまでツールです)、当該プロジェクトにおける知財の位置づけや立ち位置の定義から知財プロデュースは着手すべきと思います。

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削って考える知財部門の使命

2010年09月24日00:13

すっかり更新がご無沙汰になってしまい、申し訳ございません。
千件レベルの調査のお仕事に浸かっておりましたが、ようやく目途が経ってきました。

さて、前回に続いてイノベーションの創造現場と知財部門の関係について、考えてみようと思います。
その前に、企業の知財員がすべきことというか、企業の知財部門でしか出来ないこと=使命を、Third Party:外部機関にお願い出来る仕事を削って何が残るかで見つめていきましょう。
まず、知財管理は管理会社が実施可能ですね。そして、出願や権利化についても特許事務所にお願いすれば全て可能です。さらに、発明部署から発明を発掘する作業も、優秀で経験豊富な弁理士先生や特許技術者、知財コンサルの方であれば、上手くコミュニケーションを取って頂けると思います。
では、何も残らないのではないか、と思ってしまいますが、そうではありません。

2010年06月10日老舗とスーパーの海老天ぷらの違い【特許=海老天説】2010年08月18日課題探求の深堀レベルを明確に定義すれは、技術者もモチベーションも大幅UPする、の記事をお読み頂いた方はお分かりかもしれませんが、技術部門を刺激してモチベーションをUPし、良いイノベーションをして頂けるかではないでしょうか。つまり、海老天説の「海老」を上手く養殖することです。それには、質の良い餌と良い養殖場の環境作りが重要となります。
つまり、削って考えた知財部の使命は、餌=競合企業の知財や技術開発+自社の他社の部門の開発の状況を纏めて、技術部門へ有効な情報をパッケージ化して届ける、そして養殖場の環境作りは、そのような情報を求めて頂ける状況を作り出すことです。 それには、しつこい位のコミュニケーションと、イノベーションつまり開発事項へ前記の情報が貢献したという成功体験を得ることであることには間違いありません。
技術部門から頂いた発明を出願・権利化することも勿論重要ではありますが、企業のイノベーションに直接寄与することの方が貢献価値が高く、企業の知財部員も頼られる感じでモチベーションも高揚することは確実です。
そうすると知財部員の価値は、このような技術部門の成功体験のキーマンに何件貢献したかということになります。

あなたの知財部員としての価値はどの程度でしょうか?
そして、知財コンサルにお会いになったときにも同様に何件クライアント様を成功に導いたか、そして成功した戦略作りにどの程度・どのように関与したのかを是非聞いてみて下さいね。

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蛸壺から引っ張り凧の知財部門へ

2010年06月11日00:24

前回は【特許出願=海老天説】を通じて、『知財部門の蛸壺化』の原因と弊害についてお話しました。
ではどうすれば、『知財部門の蛸壺化』は改善するのでしょうか?
本来の有るべき姿である、文章化ではなくて、大振りの海老=発明のネタを発掘するにはどうするのでしょうか?

まず、社内でおいしい海老の住処を探すことから始めなければなりません。出来るならば、良い海老を集め、良い環境の漁場で養殖するように、特定の発明部署と友好関係を持つことが望ましいと思います。また、養殖するには日常の餌やりや世話は必須なのと同様に、平時の発明者とのコミュニケーションが重要となります。前々回の記事に記載した※1の質問にあるように、知財部に発明者の出入りが少なかったり、知財部門の担当の殆どの机に噛り付いていたりしていては、改善は程遠いと言わざるを得ません。
平時のコミュニケーションも出来て知財担当やリエゾンが海老を育てている実感が持てるレベルになると、自分の海老は本当に良い海老なのかと心配になりますので、他社の海老(出願)や漁場(事業の狙い)を調査することが必要だと大抵は気付きます。(気付かない場合には、他社分析をするように勿論促します。) ここまで辿り着けばしめたもので、発明部署への他社の特許や事業の分析情報の提供を通じて、技術という共通語で双方向のコミュニケーションが出来る知財部員が誕生し、頼られる知財部門となる第一歩となります。蛸壺時代の、難しい文言ばかりのとっつきにくい知財部員の評判とは段違いです。

加えて、頼られるところには黙っていても情報は集中してきますので、R&Dや事業部門の最新情報が得られ、全社レベルの戦略的な動きが知財部門からも積極的に参加でき、会議等での発表の出番も多くなりますので、関係部署からも評価して頂ける状況に急転して行きます。前々回の※2のマネージャーの方への質問の趣旨はここにあります。
私が企業のマネージャー時代に担当者と一緒に試算した結果、十分なコミュニケーションのためには定時までの時間の約30%を目標として発掘のためのコミュニケーション等に当てようと部門目標を掲げて約束したことがあります。その結果、今までは出願数も連続未達成で知財部門のお荷物部署であったのですが、新しい取組みの年度末には質・量ともに部門No.1の成果の快挙を達成したのです。
部下の担当者は「今日は3回も発明部署に呼ばれた」、「遅くまで残っていたら、発明部署の責任者に拉致された」等々と(嬉しそうに)愚痴はこぼしてはいましたが、やりがいはハッキリとって見て取れ、引っ張り凧部員が次々と誕生して行きました。

私の経験からも、『企業の知財部門の蛸壺化』は百害あっても一利なしと断言出来ますし、『脱・蛸壺化』が事業に貢献出来る知財部門への第一歩だと信じております。

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プロフィール

山崎 忠史 (渾称:ただす隊長)

Author:山崎 忠史 (渾称:ただす隊長)
会計系コンサルティングファームにて、上場企業を中心とした知財戦略支援のアドバイザリーやコンサルテーション、M&A等の知財・技術のデューデリジェンスやバリュエーション等の価値評価・価値算定の業務に従事。特に、特許情報や事業情報等から技術ロードマップ作成しての詳細なR&D分析が得意。

大手メーカーでの開発部門や知財部門のマネージャー(2社)を歴任した経験を生かしつつ、三位一体の戦略(事業戦略・技術開発戦略・知財戦略)に「競争戦略」を切り口とした新しい知財戦略思想とイノベーションの関係を、コンサル実務とアカデミックの両面から問い続ける毎日。

・早稲田大学ビジネススクール(MBA・夜間主)・市場競争戦略モジュール(内田和成ゼミ)卒
・東京工業大学 イノベーション研究科、イノベーション専攻、博士後期課程(田中義敏ゼミ)在学中
・技術士(機械部門)

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